まもなくリリースされるiOS11について、新機能や改善点、変更点などを紹介します。
WWDC 2017 + iOS11 Beta
先日のWWDC 2017で、iOS11について多くの情報が共有されました。
iOS11は2017/9/20、新しいiPhoneシリーズと同時に発売される予定です。iOS11のBeta版は下記リンクからダウンロードできます。
Goodbye 32bit
1. 64-Bit Only
- iOS11は64bit機器のみ互換性がある
- iOS11からは32bitアプリが実行できないため、32bitアプリで展開するアプリがあれば、64bitアプリに変換する必要がある
2. Compatible Devices
- iOS11の対応機器は、同時発売予定のiPhoneX、iPhone 8を含む、以下のとおり
iPhone |
iPad |
iPod touch |
iPhone X
iPhone 8(+)
iPhone 7(+)
iPhone 6s(+)
iPhone 6(+)
iPhone SE
iPhone 5s |
12.9-inch iPad Pro(第2世代)
12.9-inch iPad Pro(第1世代)
10.5-inch iPad Pro
9.7-inch iPad Pro
iPad Air2
iPad Air
iPad(第5世代)
iPad mini4
iPad mini3
iPad mini2 |
iPod touch(第6世代) |
参考
Mac用32bitアプリのサポートは2018年に終了予定
App Storeの変更点
1. Promotion
- App Storeからアプリを起動/ダウンロードする前に、あらかじめ「アプリ内課金」(以下プロモーション)ができる
- App Storeから各アプリ内決済商品のメタデータを利用してプロモーション可能
- そのためには、StoreKitのPaymentQueue(_:shouldAddStore:for:)メソッドを実装して、領収書情報などの決済情報の処理が必要
- ex)App Store内のプロモーション画面例
2. App Store
- アプリ登録時のTitleの文字数を50文字から30文字に縮小
- 代わりに、検索などに使用できるSubtitleフィールドを追加(上限30文字)
- Localization可能な動画数を増加し、App Previewの動画を3つまでアップロードできるように改善
- 可変のPromotional Textフィールドを追加(170文字)、アプリ説明の上に表示し、イベントなどの告知が可能になった
App Frameworks
1. Drag&Drop(SplitView)
- iOSでドラッグ&ドロップ機能を提供
- iPadではアプリ間のドラッグ&ドロップにも対応
- iPhoneではアプリ内部
でのみ動作する
2. File Explorer
- 長年、iOSユーザーの要求事項であった公式のファイルエクスプローラに対応する
- 他のアプリ(GoogleCloud、iCloud、Dropbox、TOAST Cloudなど)との相互作用が可能
Media Format変更
それぞれのメディアの高圧縮フォーマットに対応します。
- 写真(HEIF)、映像(HEVC)、音楽(FLAC)
- メディアによる容量管理の面で大きく改善された
- 新しい圧縮フォーマットに対応するにはA9プロセッサ以上が必要(iPhone 6S以上)
1.写真
- iOS11ではHigh Efficiency Image Formatに対応する(HEIF)
- HEIFは新しいイメージ圧縮標準で同じ画像品質を提供し、2倍近いデータの圧縮率を提供する
2.ビデオ
- High EfficiencyのVideo Codingに対応する(HEVC)
- HEVCは新しいビデオエンコーディングの標準で、H.264と同じビデオクオリティを提供する上、圧縮率も改良した
3.音楽
- 現時点でAppleは、iTunesとiOSでFLAC形式のファイル再生に対応していないが、iOS11からは音楽ファイルの再生が可能になった
Graphics and Games
iOS11はグラフィックに関連するアップデートが多数ありました。高性能画像認識処理やGPU Computingを対象とした基盤フレームワークが改善されました。
1. Metal2
- 既存のMetalは、デバイスのGPUを使って3Dグラフィックスをレンダリングしたり、データ並列コンピューティングで使用されたフレームワーク
- Metal2がリリースされ、その機能が拡大された
- Metal2 frameworkの発売は後述するCore ML frameworkとの連動により、さらに強力な機械学習モデルなどに対応する
- Neural Networkに対応し、クロスプラットフォームのMetal Performance Shaderをサポートする
2. ARKit framework追加
- Device Motion Tracking、Camera Scene Capture、拡張現実の実装を簡素化させるなど、多くの拡張現実の関連機能を持つフレームワーク
- UnrealのUnity、SteamVRが、これからはMacOS / iOSで使用できる
3. Vision framework追加
- 顔認識、バーコード、テキスト、Image Horizon、Rectangular regionsなどをDetectたり、Video Objectがトラッキングできる画像認識関連のフレームワーク
- イメージのcustom modelを実装するために、Core ML Frameworkと連動して使用する
4. Core ML framework追加
- Core ML frameworkは、アプリケーションでマシンラーニングを簡単に実装できるフレームワークである。高性能を維持し、バッテリーの効率を高めたマシンラーニング機能を実装できる
- 顔認識、固有名詞認識、オブジェクト追跡、言語認識などの機能は、上位フレームワークであるVision(画像処理)、NLP(自然言語処理)フレームワークに含まれる
Multipath TCP
iOS 9で対応されたWi-Fiアシスト機能は、Wi-Fi信号が弱いとき、Cellularネットワークに接続できる機能ですが、その機能を拡張したものがMultipath TCP(MPTCP)です。
- MPTCPではprimary TCP connectionでWi-Fiを設定し、Cellularデータを利用してbackup connectionを結ぶ
- もし、Wi-Fiが応答なし/使用不可の状態なら、Cellularデータ接続を使用する
- iOS MPTCPフローチャート
- この機能を使用するには、サーバー/クライアント作業が必要
- サーバー:MPTCPはTCP Option field 30を使用。サーバーとiOSデバイス間でMPTCPをサポートしないミドルウェアがあれば、MPTCPは正常に動作せず、standard TCP Connectionのように動作する。そこでサーバー管理者は、ミドルウェアの確認と共に、ファイアウォールのポリシーを確認する必要がある
- クライアント:MPTCPを使用するため、URLSessionConfigurationクラスのMultipathServiceTypeの設定を行う
System
1. Hotspot Extension
- Hotspotを設定するため、Network Extension Frameworkが追加された
- Xcode Project CapabilityのHotspot Configurationを有効にした後、NEHotspotConfigurationManagerを利用して設定されたSSID等に接続できる
2. Core NFC Framework
- 今後、iPhoneでNFCデータの読み取りが可能(書き込みは不可)
- NFC Tagの読み取りや、NDEFデータが含まれるメッセージの読み取りができる
3. APFS(Apple File System)
- 既存のHFS +ファイルシステムからAPFSシステムにデフォルトのファイルシステムを変更
- 実際は、HFSファイルシステムにコンピュータセキュリティ、個人情報保護などの付随機能をつけ、AppleがHFS+を保守してきたが、今回このような要求をすべて満たすAPFSに変更することになった
おわりに
iOS11では主にARKit、CoreML Frameworkが注目され、サービス開発面では、App Store Promotion機能や、MPTCP、32bitアプリのサービス終了計画などの問題が重要な点です。
ここに紹介した他にも、たくさんの機能がiOS11に追加されています。(例えばSwift4、HomeKit、SiriKitなど)より詳しい内容が紹介されているReferenceリンクを下記に記述しておきます。
Reference